セブン「金の」シリーズ
真のターゲットは大衆消費者層

 一方でセブンプレミアムゴールドは何をみつけたのでしょうか。私自身を例にとって説明しましょう。私は消費形態としては大衆層の消費行動をとる消費者です。

 具体的に言うと、私に関しては成城石井であまり積極的には買い物をしません。何か買い物したい場合には近場のスーパーマーケットかドラッグストアで買い物を済ませますし、急いでいるときはコンビニで買い物します。

 もっとも家族には成城石井ファンがいるので、週末の家族サービスで渋々、成城石井に出かけることは結構あります。その場合、私は家族についていくだけで、自分ではショッピングカートに商品を入れたりはしないのです。

 そんな私ですが、頑張った日や、ちょっと贅沢をしたい日にはセブンプレミアムゴールドを買います。好きな商品としては金のビーフシチューや金のアイスあずき最中を楽しみます。

 これは消費形態としては「大衆層の手に届く贅沢」という消費行動に相当します。

 私が所属する「経営戦略界隈」でこの「手に届く贅沢市場」が意外と大きくて面白いと噂されるようになったのは1990年代のスターバックスコーヒーの発展以降です。

 それまで大衆市場ではドトールコーヒーやマクドナルドのコーヒーのような市場しかないと考えられていたところに、もうワンランク高い価格設定でもコーヒーを買う消費者層がいるのだということを発見したのがスターバックスです。

 それも興味深いことには、普段の生活では大衆商品を大衆的な価格でしか買わない消費者が、コーヒーで息抜きをしたいときだけは背伸びして価格が高い「手に届く贅沢」に出費する傾向があることがわかったのです。

 言い換えると彼らが発見したのは、ターゲットとなる消費者の人数が多い大衆市場にも、プレミアム消費が存在するということです。

 そしてその発見の延長にセブンのプレミアムゴールドという製品戦略があると考えたらどうでしょうか。商品としては富裕層をターゲットにした商品でありながら、その真のターゲットはより人数の多い大衆消費者層だという洞察です。

 つまり同じ富裕層に着眼した成城石井とセブンプレミアムゴールドは、最終的に開拓した市場は全く異なるということかもしれません。

 方や富裕層向けのコンビニ需要を開拓し、もう片方は大衆層向けの手に届く贅沢需要を開拓したのだということだとしたら、そこから導かれる結論はそうなります。

 だとすればこの対比、勝負にはならずに勝敗はおあずけということでしょう。でもこの結論自体も面白い結論だと思いませんか。