「時間がない」と
言い出したら危険

「緊急でご相談したいのですが」

 私のもとには、常にそんな連絡が入ります。しかし、話を聞いてみると本当に緊急度の高い相談は極めて少ないと感じるのです。

 どういうことかというと、ここにも思い込みがある、ということ。

「時間がない」や「タイトなスケジュール」という言葉は、あたかもその選択肢しかないように思わせ、無理をしてでも納得できない意見や情報に基づいて意思決定しなければと思わせてしまう危険なサインです。

 さらに厄介なのは、こうした言葉は「計画」の実施に近づくほどに関係者が口にするようになります。商品であれば発売日、サービスであればローンチ日が迫ってくると、普段は冷静な人でも、どうしても視野は狭まります。目的に立ち返って試行錯誤するよりも、計画通りに進めることを優先しがちになるのです。

 だから、「時間がない」と感じたとき、これも相談すべきタイミングです。相談することで、本当に時間がないのか、本当に早くやらなければならないのか、と問い直すことが必要になります。

 また、何かを意思決定できないときには、その手前に決めるべきことが決められていないケースが多いです。

「時間がないから早く決めないと」と焦らずに、いったん立ち止まって意思決定に至るプロセスを見直し、整理したほうが近道だった、ということってありませんか?

 多くの場合、そこでやるべきは、無理に意思決定することではなく、本当にそれを今、決断すべきことなのかについてすみやかに検討することではないでしょうか。予防的なタイミングで相談することで、時間がないという思い込みを外すことができ、本当にやるべきネクストアクションが見えてきます。