「仕事のデキる人は、必ず相談が上手い」
そう語るのはコンサルタントとして数多のビジネスパーソンや経営者と対峙してきた安達裕哉氏だ。「報・連・相」の中でも、「報告と連絡はできても、相談となると難しい」と感じているビジネスパーソンも少なくない。本記事は2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)に輝いた安達氏の著書『頭のいい人が話す前に考えていること』には入りきらなかった「相談上手に共通するメンタル」について記述する。(構成/淡路勇介)

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

フラストレーションを抱えたまま働くのはツラい

みなさんには、悩みを気軽に相談できる相手はいるだろうか?

会社員でも、起業家でも、フリーランサーであっても多くの人が抱える共通の悩みが1つある。

それは「悩みを相談できる人がいない」という悩みだ。

仕事で悩んでいても、上司には言えない人は多い。
こんなことを言ったら「弱音は聞きたくない」と言われるかもしれないし、評価に悪影響があるかもしれない、と躊躇してしまう。

かと言って配偶者やパートナーに相談しても、ビジネスの感覚が違ったり、状況を理解してもらえなかったりして、
「そんなに気にすることないじゃない」という気休め程度のアドバイスしかもらえなかったりする。

それでは友達に相談しよう、と思っても「弱みを見せたくない」や「自分の話なんてつまらないので迷惑だろう」とへんなプライドが邪魔して躊躇してしまう。

このように、「悩みを抱えっぱなしで話せない」まま、フラストレーションを抱えて働き続ける人を私はよく見てきた。

しかし、そんな状況は辛いものだ。だから「相談相手の探し方」のノウハウに飢えている方は多い。

知人が「メンター」についての記事を書いた時「メンターって、どうやって探せばいいんですか?」という質問が数多く寄せられたということからも、それがわかる。

「相談できる相手がいない」のではなく「相談が下手」なだけ

しかし、である。

大体の場合において、そのような状況は「周りに適切な人がいない」のではなく、「自らが作り出している」というケースもまた多い。「結婚相手が見つからない」と言いつつ、その実は「自分に原因がある」ケースがあるのと全く同じである。

つまり「悩みを相談できる人がいない」のではなく、「悩みを相談するのがヘタ」な場合が数多くあるのだ。悩みを相談するのがヘタだと、周りにどんな良い人がいても、「相談できる人がいない」と感じてしまう。

では「相談ベタ」はどのように直せばよいのだろうか。

これは、私のかつての先輩の話が役に立つだろう。

私が仕事で行き詰まっているのに、相談しないことに心配をした先輩が、私にアドバイスをくれた時の話だ。

先輩「相談がヘタな奴って、どんなやつだと思う?」

「……なんとも言えないんですが、自分をさらけ出せない人とかでしょうか……? 私、自分のことを話すのが苦手なんですよ」

先輩「残念! 違います」

「え……」

先輩「自分をさらけ出せる人なんて、滅多にいないって。それが相談できる人の条件だったら、ハードルが高すぎるよ」

「……うーん……。プライドが高い、とかですか? それを言われると痛いですけど」

先輩「プライドが高くても、相談がうまい人はたくさんいるよ」

「そうなんですか?」

先輩「社長だっていろいろな人に相談してるじゃない。でもプライドは高いと思うよ」

「なるほど……。では友だちが多い、とか?」

先輩「友達が多いか少ないかも重要じゃないよ」

「……ギブアップです。さっぱりわかりません」

私は検討もつかなかった。

そこで先輩は言った。

「相談ベタってのはね、悩みが〇〇〇〇〇〇〇〇、と思う人のことだよ」

この話を聞いたのは新入社員のころだが、今でも鮮明に覚えている。

なぜなら、新入社員だろうが、出世しようが、社長になろうが、悩みは尽きないからだ。