カウンタースナイパーが容疑者とは別のビルの屋根に配置されており、おそらく高所も警戒していたはずです。今後検証されるべきですが、常識的に考えて、気づかないはずがありません。ビルの屋根どうしの距離はそれほど遠くなく、遮蔽物や障害物もなかったため、容疑者の動きは見えていたはずです。

トランプ前大統領の生死をわけた「初動」、セキュリティの専門家が「銃社会の人ならでは」と称賛トランプ前大統領警護のため配置に就く狙撃手 Photo:EPA=時事

 トランプ大統領が銃撃された直後に容疑者が射殺されたという事実からも、見つけてから撃ったというよりも、撃つ前に見つけていた可能性が高いと思います。

 いくら腕の立つスナイパーとはいえ、銃声を聞いてからその方向を探して容疑者を狙撃するまでの一連の作業を数秒で行うことは考えにくい。そうなるとカウンタースナイパー側も狙撃をためらったか容疑者を見逃したことになります。トランプ氏を狙撃しようとする意思があることを確定できなかったのかもしれません。
 
 カウンタースナイパーの役割は、容疑者を無害化することです。本来であれば、容疑者が怪しい動きをしている段階で、カウンタースナイパーは照準を合わせているはずです。そして、銃を構える行動に入った段階で狙撃するのが通常の対応です。
 
 容疑者が屋根に登ってきて、バックから何かを取り出し、銃らしきものを構えたなら、通常は射撃するべきです。もし見ていたにもかかわらず、射撃を躊躇した理由があれば、それは何か特別な事情があったのかもしれません。