「酷暑乗り切り緊急支援」で迷走する岸田政権の物価対策、定額減税直後のバラマキPhoto:Anadolu/gettyimages

岸田首相が突如表明、電気・ガス料金の補助再開
ガソリン補助金年内継続の必要性は疑問

 2024年度の骨太方針が閣議決定された6月21日の記者会見で、岸田文雄首相は突如、追加の物価高対策を表明した。

「酷暑乗り切り緊急支援」として6月(5月使用分)で終了していた電気・ガス料金の補助を8~10月に再開し、燃料油激変緩和措置(ガソリン補助金)を年内まで継続する。年金世帯や低所得者世帯を対象とする追加の給付金も検討する。

 だが6月からは1人当たり4万円の定額減税が始まったばかりだ。給与年収で2000万円以下の納税者とその扶養親族を対象に4人家族であれば計16万円が所得税と住民税から控除される。

 3.3兆円規模の定額減税は、消費喚起はそれほど期待できないが、家計所得の下支え効果が大きい。仮に電気・ガス・ガソリンなどへの補助が24年6月末で全て終了したとしても、大多数の世帯では、減税額は補助終了に伴うエネルギー代の増加額(25年5月までの1年間)を上回ると試算される。なぜ追加の物価高対策が必要なのかは疑問だ。

 秋に自民党総裁選が控える中、再選を目指す首相の「バラマキ政策」との見方もあるが、日本経済が「金利のある世界」に戻りつつある中、財政健全化の重要性は一段と増している。目的が曖昧で費用対効果の低い政策に兆円単位の財政支出を行う余裕はないはずだ。