DX180社図鑑 株高&高給はどこ?#10Photo by Masato Kato

時価総額世界1位となり、世界のAI普及の要の企業となった米エヌビディア。デロイト トーマツ コンサルティングや日立製作所など大手ITベンダーとの提携や、国の補助を受けてのデータセンターの整備を加速させている。特集『DX180社図鑑』(全31回)の#10では、エヌビディア日本代表と米国本社副社長を兼務する大崎真孝氏のインタビューをお届けしよう。大崎氏は日本における生成AIの普及には、ITベンダーの自己変革が必要と主張する。その理由とは。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

エヌビディア本社も日本市場を重要視
AIデータセンターに積極投資を続ける

――デロイト トーマツ コンサルティングと提携を結んだ理由は。

 エヌビディアには、エヌビディアパートナーネットワーク、NPNという制度があります。顧客のシステムに私たちのシステムを組み込むSIer(システムインテグレーター)や、GPU(グラフィックプロセッシング・ユニット)の販売代理店、技術サポートのソフトウエアソリューションを提供する企業、クラウドソリューションを提供するパートナーなど、さまざまな企業が加入しています。

 今回デロイトのようなコンサルティングファームにパートナーとして入っていただいたのは、彼らは上流から下流まで、コンサルティングからインテグレーションサービス、そしてビジネスをサポートするというところまで全て対応できるからです。ビジネスモデルのアイデア提供や、市場展開なども含め、一貫してサポートいただける可能性があるということで、提携しました。

 以前はエヌビディアのパートナーシップは技術寄りのものが多かったのですが、ビジネスモデルを提案するための提携がグローバル規模で多く立ち上がっており、この流れが日本にも来ています。ソフトウエアを作るだけでは生成AIビジネスの立ち上げは難しい。日本企業の皆さんもビジネスモデルをどうしようというところで悩まれているからです。

――国内でのエヌビディアの投資については。

 エヌビディアの事業リージョンはアメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アジアそして日本の四つに分かれています。日本は唯一一つの国で独立しています。それだけ本社も日本の独自性と可能性を理解してくれていて、投資に対しても大変寛容です。人への投資に加え、日本国内で立ち上げるAIファクトリー、つまりAIデータセンターに、諸外国に先駆けてコンピューティングを供給するほか、スタートアップの支援、政府機関の研究所に対しての支援など、あらゆる角度での投資を日本ではさまざまなところで展開しています。

 エヌビディアのビジネスモデルはエコシステムを作ることです。各産業、企業、研究機関に属する開発者にGPUを供給し、われわれのエンジニアやビジネスチームが入って支援を行っています。

 データセンターで作ったニューラルネットワーク、つまりAIの頭脳を各社の製品に組み込むことをエッジコンピューティングといいますが、これは全ての産業に適用できる可能性があります。すでに製薬、自動車、ヘルスケア、メディカルイメージングなど、組んでいない産業がないほど多くの業種の企業と組んで実施しています。

 エヌビディアが提供するコンピューティングプラットフォームが特徴的なのは、それぞれ異なる業種の全てに対して転用できるということです。業種別のカスタマイズには携帯電話の基地局用、ロボティクス用など専用のソフトウエアを用意します。ベースとなるコンピューティングプラットフォームは共通です。

 このやり方は、われわれにとっても顧客にとってもパートナーにとってもメリットがあります。つまり、一つのドメインに特化しながらもほかの事ができるというわけです。自動運転に携わる人がロボットのAIも作れるし、ゲームに携わっている人が医療AIを作ることも可能なのです。エヌビディアとしても開発投資をこの一つのアーキテクチャーに対して集中投下できるのです。

生成AI普及の要になる企業ともなったエヌビディア。大崎代表は日本のITベンダーにも変革が必要だと語る。それは、AIの企業への普及に、これまでITベンダーが手掛けてきたシステムとは違うアプローチが必要になるからだ。日本企業に生成AIが普及するための課題についても語った。