AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦#1Photo:REUTERS/AFLO

米オープンAIが火を付けた生成AI (人工知能)ブームで、米エヌビディアのAI半導体「GPU(画像処理半導体)」の争奪戦が勃発した。顧客としてGPUをどう調達するのか。あるいは、サプライヤーとしてエヌビディアにどう食い込むのか。特集『AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦』の#2では、エヌビディアのサプライチェーン構造を全解剖し、「エヌビディア経済圏」を攻略する道筋を探る。

生成AIブームで急速に形成された
エヌビディアGPUの需給構造

「次の産業革命が始まった。従来のデータセンターは “AI工場”になり、あらゆる分野でイノベーションが加速する」

 6月2日、台湾台北市の国立台湾大学総合体育館。アジア最大級のIT展示会「コンピューテックス台北(COMPUTEX)」に先立つ講演で、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高責任者(CEO)は、会場に集まった6500人以上の聴衆を沸かせた。

 生成AIブームを追い風に、エヌビディアの躍進が続いている。エヌビディア製GPU(画像処理半導体)の出荷が急増したためだ。

 生成AIの基盤技術である大規模言語モデル(LLM)の開発には、膨大な計算処理が必要だ。それにはエヌビディアのGPUが最も適しているとされており、米グーグル、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、マイクロソフト、米メタ・プラットフォームズといった巨大テック企業が殺到した。

 さらに、米オープンAIや巨大テック企業だけではなく、スタートアップを巻き込んだ生成AIの開発競争は一段と激化。LLMの性能は、学習するデータが増えれば増えるほど向上するため、一段と膨大な計算資源がさらに必要になり、需給バランスが一気に崩れた。

 ファン氏の狙い通り、世界中のデータセンターが次々に“AI工場”に生まれ変わり、AIを取り巻くあらゆるプレーヤーがエヌビディアのGPUのサプライチェーンと結びつき始めている。

 果たして、生成AIブームの登場で起きた「産業構造の激変」を日本企業は好機にできるのか。次ページでは、急拡大している「エヌビディア経済圏」の構造を大解明しつつ、日本企業がその経済圏に食い込む“ 秘策”に迫る。