必ずオチをつける孫正義の会議

「ソフトバンクは、外から見ると僕がワンマンで相当にやっているように思われがちですけど、実態は意外と合議制なんですよ。僕の提案でも、きちんと納得できる反対意見なら歓迎ですから、若い連中もいいたい放題ワーワーやっています。CMの企画会議なども含めてすべて」

 当時、ソフトバンクの「白戸家」のCM(「お父さん犬」の声優を北大路欣也氏が務め、長女役の上戸彩氏らが出演した)が話題になっていたので、CMの企画会議の話になったのだ。

 創業者社長にありがちな独裁的な経営スタイルではなく、合議制というのには驚いたが、和気あいあいとした雰囲気で会議が進んでいたのであろうことは、他の参加者の証言からもよくわかる。以下は、現LINEヤフー会長の川邊健太郎氏が孫氏の会議についてイベントで話したものだ。

司会:ソフトバンクさんのようなところは、風土というより、孫(正義)さんのDNAがもう文化のレベルまで染み渡るという感じですか?

川邊健太郎(当時ヤフー副社長。現LINEヤフー会長):それはそうですよね。孫さんが一代で築いたというか手塩にかけて築いた考え方、チームの作り方、話の落とし方というか。孫さんって、会議が面白いんですよ。必ずオチをつけようとするんですね。

司会:落語みたいな感じですか?

川邊:そうです。考えなくてもいいのに、その場にいる人を楽しませようという精神が強いんですよね(笑)。

必ず話のオチをつけようとするので、皆でゲラゲラ笑うのですけれども、あれだけ笑いがある会議というのがまさに、ソフトバンクの企業文化なのではないでしょうか。(中略)普通、真面目な会議であんなにゲラゲラ笑わないですよ。Yahoo! JAPANなんて、全然笑わないですから。

司会:どこかで皆がメタ認知していて、孫さんだったら何と言うかなといった感じがもう染みついているっていう。

川邊:そうですね。この会議、孫さんだったらどうオチをつけるのかな、といった感じで、その前提に立って皆が行動しますよね。Yahoo! JAPANにはYahoo! JAPANの組織文化があって、文化がチームワークの全てだという可能性はありますよね。

(Industry Co-Creation『孫正義は会議で必ずオチをいれて笑いをとる』2017年5月9日)

 これは面白い証言だろう。同じソフトバンクグループでも、孫氏の出席する会議では笑いが絶えない雰囲気となり、ヤフーの会議では全く笑いが起きないという。2017年のヤフージャパンの社長は、宮坂学氏だ。会議を取り仕切るトップによって同じグループでも雰囲気がガラッと変わる。