マイナーチェンジで
乗り味が向上した要素は二つある

 発売開始から10年目に突入。いわゆる“新車効果”が現れる発売当初よりも、いま現在のほうがより多く売れているという何とも息の長いクルマ、4代目ロードスター。ND型と呼ばれるこの名車に、昨年大幅な改良が加えられた。

 開発者インタビュー前編(https://diamond.jp/articles/-/347255)では、あまり目立たないエレキ部分についてお話しした。後編では肝心の“走り”の部分を中心にお伝えしよう。お話を伺うのは、ロードスターの開発主査、齋藤茂樹さんである。

マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹氏マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹氏 Photo by AD Takahashi

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):マイナーチェンジが施されて、ND型ロードスターは大きく乗り味が変わりました。私も1週間ほどじっくり試乗させていただいて、その見事なできばえに感嘆した次第です。まずコーナリング時の安心感が違う。どっしり安定しているので、気持ちよく安心してコーナーに飛び込んでいくことができる。

マツダ 商品開発本部 主査 齋藤茂樹さん(以下、齋):乗り味が向上した要素は大きく二つあります。

 一つ目はLSD(Limited-slip differential:差動制限装置、左右のタイヤの動きに差が出たときに調整する装置)を、アシンメトリックLSDと呼ばれる……これは恐らく世界初だと思うのですが……マツダユニークのものに、マツダオリジナルのものに変えたこと。

 二つ目は、電動パワステの変更です。電動パワステ(パワーステアリング。ドライバーがハンドルを軽い力で操作するだけで車を運転できる仕組み)に関しては、実のところ自分としては変えたくなかったのですが、担当の者に「これは変えなきゃダメです」と言われてしまって……。ええ、ここは先程お話しした、CSMS(Cyber Security Management System)対策のための“エレキ総取り替え”の話につながるところです。エレキプラットフォームを変えたら、前のパワステが動かなくなってしまった。

F:対策するには、モーターは同じで、制御部分だけ変えれば良いのですか?

齋:いやダメです。それでは新しいエレキに対応できません。モーターごと総取り替えです。マツダで使っている最新のもの、具体的に言うとCX-60で使っているのと同じモーターを使ってくれと。