電欠したEVを救うべく
JAFが出動させる「特別なクルマ」とは?

 だが、エネルギー切れが起きたクルマに対するJAFの「救済措置」に関しては、BEVとガソリン車/ハイブリッド車で違いがある。

EVアンチが指摘する「ガソリン車よりトラブル多い」って本当?JAFの調査で分かった実情EV充電対応サービスカー(撮影:吉川賢一)

 冒頭で述べた話にも通じているが、いったん充電が切れたBEVを走れる状態に戻すには時間がかかる。JAFはこうしたドライバーを救うべく、急速充電装置を搭載した特別なクルマ「EV充電対応サービスカー」の配備を進めている。BEVユーザーにとって、まさに救世主といえるサービスだ。

 しかし、一度の救援充電でバッテリーを使い切るため、JAF隊員は急速充電後、「すぐに基地へ戻って再充電する必要がある」という。連続で電欠案件が発生すると対応できなくなることから、多発するとJAFに迷惑をかけてしまうのは確かだと言える。

EVアンチが指摘する「ガソリン車よりトラブル多い」って本当?JAFの調査で分かった実情JAFが使用する急速充電の機材。下側がバッテリー本体、上側が充電システムで、組み立てて使用する(撮影:吉川賢一)

 一方で、ガソリン車が燃料切れを起こした際は、携行缶などから燃料を補給するだけでクルマを復活させることができる。JAF隊員とドライバー、そして周囲のクルマにとって、この「復活までの所要時間」の差は大きいと言えるだろう。

 調査結果に話を戻すと、BEVドライバーからの出動要請理由の4位は「落輪、落込」(43件、6.5%)、5位は「事故」(34件、5.1%)となっていた。いずれもガソリン車/ハイブリッド車にも共通するトラブルだと言えるが、BEVには「漏電」のリスクがある点が異なる。

EVアンチが指摘する「ガソリン車よりトラブル多い」って本当?JAFの調査で分かった実情耐電グローブ、ゴーグル、耐電ニーパッド、耐電靴などを装着したJAF隊員(撮影:吉川賢一)

 そのため、BEVの事故対応に当たるJAF隊員は、耐電グローブ・ゴーグル・耐電ニーパッド・耐電靴などを着用し、フル装備で取り組む必要がある。この点も、確かにBEVならではの負担だと言える。

 BEVの先駆けである日産自動車の「リーフ」が世に出た2010年以降、日本ではこれまでバッテリーに起因する大規模な車両火災はほぼ起きてこなかった。その背景にはJAF隊員による細心の注意があるのかもしれない。