【シナリオ3:環境ビジネスの落日】

 トランプ氏は脱炭素ビジネスを「green scam」(グリーン詐欺)と言い放っている。どこまで本気かは別として、かつて演説で一部の洋上風力発電を停止させるとも発言した。何でも、鳥を殺す怪物に見えるそうだ。

 もし、風力発電所の認可を取り消したり、行政が使う電力に「反風力」のポリシーを導入したりすると、関連業者にとって大打撃だろう。その影響は米国内にとどまらない。

 国際的に、「GX」なる単語が流行している。Green Transformationのことで、GHG=温室効果ガスを発生させる(であろうと思われる)化石燃料の発電手法をやめて、太陽光発電や風力発電などにシフトする動きだ。周知の通り、脱炭素や二酸化炭素を吸収する技術やプロジェクトに、世界で相当な額が投じられている。

 なお、筆者は二酸化炭素削減がばかげたものとは思わないし、企業姿勢としては推進したほうが良いのではないか、という立場だ。ただ、2050年のカーボンニュートラルを手放しで信じるほどナイーブでもない。世界で多くの人が、環境問題のある種のうさん臭さを嫌悪しているだろう。今回はイデオロギーの問題ではなく、実利的な問題として述べる。

 つまりトランプ氏が再選すれば、環境や脱炭素に関連する投資は減少し、代わりに旧来のエネルギーが見直される可能性がある。再生エネルギー投資が落ち着く見込みが立ち次第、これも企業行動を左右させるだろう。

 11月に「ほらトラ」と言っているかは分からない。ただ、優秀な企業人なら早め早めの行動が勝敗を分けると知っているだろう。さまざまな可能性を考えて事前に準備することは、決して悪いことではないはずだ。