秋に予定されるアメリカの大統領選挙は、「もしトラ(もしトランプ氏が大統領に返り咲いたら)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が勝つ)」への様相を呈し、日米関係の今後がますます注目される。今回は、佐藤優氏がいま話題の各界プロフェッショナル12人と対話した最新刊『天才たちのインテリジェンス』(ポプラ社)より、佐藤氏と政治学者の白井聡氏との対談(2018年10月収録)を抜粋。当時二人が論じた「日本独自のねじれた対米従属の在り方」や「日本の存在感」がどう示されるべきかについて、再びの「トランプ大統領」登場に備え、改めて徹底検証する。
日本の対米従属の異様さは、
「アメリカは日本を愛している」という虚構
佐藤 「ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ」。白井さんの新刊『国体論―菊と星条旗』を読んで、ヘーゲルが『法の哲学』序文で述べたこの言葉を思い出しました。時代が可視化されるのは、それまでのシステムが限界を迎えるときです。『永続敗戦論―戦後日本の核心』からつながる流れとして、いよいよ、日本とアメリカとの関係も変化する時期にきたのだと。
白井 終わりが見えていながら、延々と引き延ばされている状況ですよね。『永続敗戦論』を書いたのは安倍政権が成立して間もない時期でした。まあひどい政権になるだろう、という予見と理由は同書に書いた通りですが、まさか6年(当時)にも及ぶ長期政権になるとは思いもせず。それへの苛立ちが『国体論』を書くモチベーションにもなりました。