さらに、暴言を書いた紙を集合住宅の玄関などに貼り、地位や立場を脅かせば「名誉毀損罪」に該当するし、嫌がらせは内容によっては「脅迫罪」や「迷惑防止条例違反」等に該当する。

 Yさんの場合、数々の手紙や暴言を書いた紙や、「実家の所有権を買い取れ」という内容の書面などが「DV等支援措置」の手続きを進める過程で証拠として認められた。

 大事なのは親から受けた行為の数々を「いつごろからどこで受けたのか」を、できる限り思い出してメモなどの記録を残すこと。

「刑法では家族間の犯罪を不起訴とするものは一部の財産犯に限られ、身体的暴力は、暴行罪、傷害罪、殺人罪に問われます。心理的な攻撃も脅迫罪や強要罪に該当することがあります」

「また、性的な強要は不同意性交等罪、不同意わいせつ罪、監護者わいせつ及び監護者性交等罪などで警察に訴えることもできます。親のつきまといも迷惑防止条例違反として刑事罰の対象になり得ます」

毒母を目の前にした
娘の体に生じた「異変」

 ただし、行政への手続きを駆使しても毒親とのつながりを断てなかった人や、さまざまな事情により各種手続きを取ることができない人、あるいは何らかの事情によって毒親と連絡を取らなければならないという人もいる。そういう場合は弁護士に相談することを柴田弁護士は勧めている。

 個人事業主のA子さん(40代)は、IT系の仕事をしていることから自分でホームページを立ち上げ、名前と顔、会社の住所を記載していた。

 母親(70代)のしつこい監視の目をくぐり抜けて、大学進学とともに実家を出た。社会人になってからも、ほぼ毎日のように母から連絡が来るのが嫌で、実家に帰省することも少なくなった。自分への執着心が薄れたのだと思い安堵したのもつかの間、A子さんが講師を務めるITイベント会場に母が突然現れたというのだ。