「自営業や病院の先生やスタッフたち、私たち士業もそうですが、職業によってはホームページ上でどうしても顔と名前を公開せざるを得ないケースもあります」

「親が子どもの名前をインターネットで検索して『イベントをやるんだ』とわかってしまうと、相手の迷惑を考えないで押しかけてくる。それが毒親で、子どもと連絡が取れないので、なんとかして接触しようと行動を起こします。逃げようとしても追いかけてくるのです」

 第三者から見たら「年に一度ぐらい会ってもいいじゃないか」と、思うかもしれないが、親からの虐待を受け続けてきた子どもにしてみれば、毒親の存在そのものがストレスになっていることが多い。

 親からメールやLINEが来たら中身を見なくても、動悸がおさまらなくなって気持ちが悪くなりその場で倒れるなど、体に異変が生じるケースもある。

 A子さんはイベント会場に押しかけてきた母親の姿を見た瞬間、動悸が治らなくなってその場でしゃがみこんでしまったそうだ。なんとかイベントは無事にやり過ごしたが、「親から離れる」という気持ちがいっそうたかまり、ブレることはなかったという。

「分籍やDV等支援措置で親との距離を取ったとしても、今はSNSやインターネット等で居所がわかってしまうことはよくあります。仕事上、実名や顔を出さなければならない人もいるので、行政上の手続きはすべての毒親に有効とは限らないのです」

「私が普段、多く扱う離婚事件でも同じことが言えるのは、被害に遭った、現在遭われている方自身が、『毒親から離れる』という強い意思を持つことが大切で、その気持ちさえあればどのような立場に置かれていても親から離れることはできます」

 後編では実際に弁護士に介入してもらい、親との縁を断ち切った男性のケースを紹介する。

柴田収さん 弁護士。岡山大学大学院法務研究科修了。2012年にテミス法律事務所を設立し、離婚問題、特にDV・モラルハラスメント(モラハラ)事案に積極的に取り扱う。23年10月発売『毒親絶縁の手引き DV・虐待・ストーカーから逃れて生きるための制度と法律』(紅龍堂書店)の監修を担当。ホームページ https://www.themis-okayama.jp/
【毒親を捨てる】70代毒母の異常行動に鳥肌…突然の対面で娘の体に生じた「異変」とは?柴田収弁護士 撮影:筆者