共同開発する完全自動運転専用車は
撤退したGMに代わり日産と協業する?

 今回の発表では、大きく5つの領域についてその方向性が示された。

 筆頭は、「次世代SDVプラットフォーム」領域だ

 ホンダと日産はこの度、同領域での基礎的要素技術の共同開発で正式に契約した。

 まず1年をめどに基礎研究を終えることを目指し、成果が出ればその後に量産開発の可能性を含めて検討する。

 SDVなるものが今、クルマの未来を考える上で最大の要因だといわれている。

 ただし、自動車産業界の各方面とSDVについて意見交換すると、SDVには明確な定義がない。ざっくりとしたイメージはあるものの、各企業でSDVに対する解釈が若干違う。

 SDVは、2010年代半ばごろから、ドイツのメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が次世代技術に向けたマーケティング用語として打ち出した「CASE」を、焼き直したものに見えなくもない。

 CASEは、コネクテッド、自動運転技術、シェアリングなどの新サービス、そして電動化が融合するという発想だが、これらをソフトウエアで横串を刺して、IT産業との関わりを強化するのがSDVのイメージだといえるのではないだろうか。

 見方を変えれば、SDVには業界全体での協調領域がまだ確立されていない段階だ。ホンダは日産と組み、強みを生かせる競争領域を一気に広げたいところだろう。

 SDV領域では、EV事業でホンダが協業するソニーを巻き込むことも考えられるが、具体的な連携図式の中でソニーの役割は示されていない。

 また、自動運転についても不透明感が残る。ホンダが米国のゼネラルモーターズ(GM)、やGM子会社のクルーズと共同開発を進め、26年に都内での実用化を目指していた完全自動運転専用車「クルーズ・オリジン」は、GMが米現地時間の7月23日、開発を凍結することを明らかにした。

ホンダが2023年10月、ジャパンモビリティショーで出展したGMクルーズと共同開発する「クルーズ・オリジン」ホンダが2023年10月、ジャパンモビリティショーで出展したGMクルーズと共同開発する「クルーズ・オリジン」 Photo by Kenji Momota

 本事案について筆者がホンダ本社に問い合わせたところ、「クルーズ・オリジンの生産凍結の影響は精査中。ホンダとしてはできるだけ早期に日本での自動運転タクシーサービスを開始したいと考えている」との回答にとどまった。

 今回の会見ではその続報はなく、日産との自動運転技術における協業の具体策についても示されなかった。

 ホンダは乗用車としては最も高度な自動運転レベル3を用いた技術を「レジェンド」に搭載、21年3月に量産化している。だが、その後はレベル3に対する今後の具体案については明らかにしていない。