「人中心」の肝はエネマネ領域
新サービスで日産とどう組む?

 そのほか、ホンダと日産が協業する4つの領域は、「バッテリー領域」「e-Axle領域」「車両の相互補完」、そして「国内のエネルギーサービス、資源循環領域」だ。

 各領域での概要は以下の通りだ。

 バッテリー領域では中長期に、バッテリーの骨格であるセルやモジュールの仕様を共通化することで基本合意。

 EVの動力機器を一体化させたe-Axle領域では、まずはモーターとインバーターを共有することで合意。会見の中で、三部社長は具体的なサプライヤーとして日立Astemoの名前を挙げた。

 車両の相互補完では、グローバルでガソリン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EVなど多様なモデルで検討。現時点では具体的なモデル名称は公表しなかった。

 そして、五つ目である国内での、いわゆる「エネマネ(エネルギー・マネジメント)」の領域は、充電・バッテリーを活用したエネルギーサービスなどで協業の可能性を検討する。

 日産はエネマネに関連して、住友商事とバッテリーのリユース・リサイクル関連企業「フォーアールエナジー」を協業で運営している。以前、福島県浪江町にある事業所を取材したが、今後の規模拡大への対応策が気になった。

 一方で、ホンダは神奈川県小田原市のかまぼこの老舗「鈴廣」で「ホンダe」などを使う長期のエネマネ実証を行うなどしてきたが、具体的な事業化の計画は明らかになっていない。

 エネマネは、まさに「技術は人のために」を実現する事業領域であり、日産との協業によって、持続可能な事業として成立させることを目指してほしい。

 このように、ホンダと日産との技術連携はまだ初期段階だ。とはいえ、グローバルでの自動車産業の変革が急速に進む中、各領域での量産化・事業化に向けてできるだけスピーディーに経営判断を行わなければならない状況にある。

 両社の社長は会見の中で何度も「スピード感」の重要性を強調した。

 また、三部社長は「30年が勝負どころ」と日産との技術連携の成果を20年代後半までに具体化させたいという意思を示した。

 その上で、改めてだが、ホンダにおいては企業理念である「技術は人のため」という軸足をぶらさず、次世代に向けて進んでいくことを期待したい。