残業禁止やパソコンの電源オフで従業員の労働時間を削減するーー表面的な問題解決のためにこのような「上から蓋」の改革を行ったとて、管理職へのしわ寄せが増えてしまい、真の解決にはならないだろう。そこで、労働や組織の研究者である筆者は、組織全体の役割や業務量を調整する「ワークシェアリング・アプローチ」を提案。その具体的な施策とは?※本稿は、小林祐児『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)の一部を抜粋・編集したものです。
管理職の負荷を軽減するための
ワークシェアリング・アプローチ
ここで取り上げる「ワークシェアリング・アプローチ」の主眼は、管理職の役割を変更したり共有したりすることで、全体の役割や業務量を調整していくことです。管理職の負荷の高さに気づいた企業がしばしば検討するアプローチでもありますが、ただシンプルに「役割の割り振り」「作業の分担」では済まないポイントも存在します。整理して進めるためにも、先に全体像を示しておきましょう(図表42)。
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図に表したように「ワークシェアリング・アプローチ」は3つの軸から成っています。まず1つ目の軸として、ベースとなる施策から見ていきましょう。図表42をご覧ください。中でも最初に行うべきはベース施策(1)の現状把握です。中間管理職の役割と業務と負荷、そして実際の労働時間を洗い出すこと。自社の管理職が置かれている状況を、会社として正確に把握することが第一です。
老舗企業であれば、管理職の役割が「いつの間にか増えている」ということもあります。管理職がどれくらい働いているのか、実質的な労働時間を把握できている企業は少ないものです。会社として良かれと思って入れているシステムや制度が全く機能しておらず、管理職の業務を増やしているというようなことも、現場に降りてみない限りわかりません。
手法としては直接的な現場のヒアリングはもちろんのこと、現状把握を目的にしたサーベイ(調査)を行うことも検討したいところです。実態をデータとして総覧できるようになれば、部署ごとの比較もできますし、どこでどんなことが負荷を高めているのかがわかりやすくなります。社内で経営陣などと議論する際も、そうしたデータを見ながら進めることができますし、定期的に実施することで施策の効果を測定することができます。