1人の上司が管理しきれる
部下の数はたったの7人?

 次にやるべきは、(2)組織構造・フラット化の見直しです。中でも、1人の上司が直接管理する部下の人数「スパン・オブ・コントロール」の問題は極めて重要です。

「部下が多すぎる問題」は部署ごとに事情が異なり、多すぎる部署が長年放置されてしまっているパターンは非常に多いからです。

 部下の人数が多くなりすぎると、部下への時間配分が少なくなり、能力開発や成果に悪影響が出ることが知られています。経験的な議論においても、目標管理から評価まで管轄するとなると、部下人数は7人が限界である、との意見がよく聞かれます。

 ちなみに、バブル期前後の組織フラット化の代表格としてしばしば取り上げられたトヨタ自動車も、その後、管理範囲の拡大に苦しみました。グループ長が10名から20名超のメンバーを持つことになり、OJT(On the Job Training/職場内訓練)の機能不全と人が育たないという問題が現場から叫ばれたのです。

 その対応として、トヨタは2007年に「組織の小集団化」を導入し、小集団のリーダーにチーム全体の仕事の管理とメンバーの指導・育成に責任を持たせる編制に変更しています。この小集団のリーダーは主に係長相当である主任クラスで、まさにスパン・オブ・コントロールを小さくするものです。

 このように「減りすぎた管理職」と「増えすぎた部下」問題の根本解決のためには、やはり管理するリーダー的ポジションの増加が検討されるべきでしょう。課長級のファーストライン・マネジャーのポストや、主任・リーダーといった管理職未満のポジションを増設することです。

 そうしたポストが生まれない限り、若手の昇進意欲を維持できない企業もあります。人件費を抑えることに躍起になってきたバブル崩壊後の日本企業ですが、要となる管理職の体力が削られてしまってはもとの木阿弥です。

上から押し付けられた改革で
割を食うのは中間管理職

 ベース施策の3つ目は、(3)働き方改革のアップデートです。現在の働き方改革は「労働時間上限設定」への矮小化、そして「メンバー層」への矮小化という二重の矮小化を経て、管理職の負荷をむしろ上げているリスクがあります。