働き方改革ブームの時期には、トップダウン型の強制的な労働時間管理を行い、経営会議に上がってくる残業時間の減少だけを見て「一定の成果が出た」と言う企業があふれました。

 しかし、残業禁止やパソコンの電源オフなどで働く時間に「上から蓋をした」だけの状態では、どこかに副作用が出て当然です。そのあふれた労働時間は、管理職の肩にのしかかっていることがよくあり、それらは会社から見えにくくなっています。

 管理職の労働時間も、メンバー層と同様に注視するとともに、その「差」にも目配りし、過重労働や「タイパ逆転」(編集部注/管理職がサービス産業を強いられる結果、時給が平社員並みに落ちる現象)が避けられているかどうかを確認するべきです。そして、表面的なトップダウン型の時間管理だけではなく、組織開発型、ボトムアップ型の残業施策を展開するしかありません。

部下は帰宅、管理職はサービス残業…部下より「時給」が安くなる罰ゲーム管理職の悲哀『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書) 小林祐児 著

 こうした組織開発的な残業施策の手法については、筆者と立教大学教授・中原淳との共著である『残業学』(2018年、光文社)で詳しく議論しました。そこで行った研究でも、残業削減施策は、上からの「押し付け」では効果が無いことがわかっています。きちんと従業員のコミットメントを引き出せない施策は、現場で骨抜きにされるからです。

 現場には、現場従業員はすでにわかっている「無駄」があふれています。それがなぜ無駄のまま放置されているかというと、「誰も言わない」からです。「サーベイによる見える化」をベースに、現場での本当に必要な効率化をチーム内で議論し、対話する機会を設け、それぞれの職務と職場に合った真の効率化を、ボトムアップで実施していく必要があります。