商社の中核にいる人ほど
AI時代に活躍できる!

「商社マン」はAI時代が到来しても生き残る!AI研究者が太鼓判を押す納得の理由10年後のハローワーク』(川村秀憲 著、アスコム、税込1650円)

 トータルで動ける規模がありながら、一方でさまざまな扱い品目ごとに細分化された中小企業の集まりのようなかたちでもあるわけです。

 もちろん、商社で働く人は一般にホワイトカラーですから、彼らの業務がAIによって大きく効率化されていくことは変わりません(※)。

※編集部注:本記事の著者・川村氏は、基本的には「生成AIの登場によって、事務職を中心としたホワイトカラーの地位が脅かされる」と考えている。

 一方で、AIの成長と発展、普及は、それ自体が大きな経済活動となるのですから、さまざまなモノやソフトが更新されるという需要を生み出します。新しい企業が生まれ、新しいサービスが生まれれば、当然いろいろなモノが必要になり、新しい販路や物流が必要になるわけです。

 つまり商社は、(すでに進めているとは思いますが)AIに特化した事業を大きくできれば、これから世界中で起きる変化が大きいほど、チャンスを広げられる潜在力があるのではないでしょうか。

「商社マン」はAI時代が到来しても生き残る!AI研究者が太鼓判を押す納得の理由出典:『10年後のハローワーク』(川村秀憲 著/アスコム)

 たとえば三井物産では、アメリカのAI医療診断企業に出資し、その技術を組み込んだ診断システムを医師不足の途上国に売り込み始めているそうです。商社の仕事には、エネルギー、小麦……といったモノの貿易だけでなく、システムそのものを丸ごとコーディネートし、販売するといったスタイルの仕事もあります。

 こうした変幻自在さ、状況を読み、考える力の強さがある商社は、むしろAI時代でも生き残るだけでなく、より業績を伸ばすチャンスもあるでしょう。

 商社で働く人のなかでも、いわゆる「商社マン」の場合は、少なからず経営者のマインドや、意思決定の仕事をし続けてきたはずです。市況や情勢を読みながら、ギリギリのところで判断ができなければなりませんし、自社でモノを作っていない以上、どこにどのような新しい商材があるのか、最近の世界ではどのようなニーズがあるのかをつねに両にらみしながら、問題解決のプロセスに絡んでいく仕事のスタイルが要求されます。

 つまり、商社の中核にいる人ほど、より個々が企業のような、経営者のようなマインドを持っていることになるのです。

 こうした人たちがより活躍できるようになるのがAIの時代です。さまざまなリソースをまとめ、コーディネートしながら新しい価値を生み出す発想は、AIにはなかなか代替は難しいと思います。