
7大商社の一角、双日は2030年までに純利益を2倍の2000億円規模に引き上げる野心的な計画を掲げる。同社は既に3年間で6000億円規模の大胆な投資計画を推し進めている。では、純利益倍増計画は本当に実現可能なのだろうか。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、同社の渋谷誠代表取締役専務執行役員CFOを直撃した。渋谷氏が具体的な数値を基に純利益2倍の青写真を披露するほか、非資源分野へのシフトや投資の方針、財務戦略、株主還元の方針なども解説する。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
2030年純利益2倍へ、3年で6000億円投資
要はROE向上とキャッシュフローの最大化
――2030年に純利益を2倍にする目標を掲げています。
昨年4月から3カ年の中期経営計画2026をスタートしています。中計2026のスタートに先立ち、2030年を目途に現状の収益規模を2倍に伸ばすという「ネクストステージ」を設定しました。
ネクストステージとは具体的には、純利益2000億円、ROE(自己資本利益率)15%、時価総額2兆円を目標にしています。一気に数字を積み上げるわけではありませんし、そこで終わりではなく、一つの通過点に過ぎません。中計2026は、ネクストステージを見据え、しっかりとした成長基盤やそれを支える人材を強化していきます。
――財務面で最も重視するKPI(重要業績評価指標)は。
最重要な財務指標はROEです。課題が残る株価が続いてしまっているので、ROEをさらに上昇させ、(ROEから株主資本コストを差し引いた)エクイティスプレッドを引き上げて、企業価値をさらに高めていく必要があります。
中計2026では定量目標として、ROEは3カ年平均で12%超としています。投資面では、6000億円の新規投資を実行すると定め、株主還元については、基礎的営業キャッシュフロー(CF、編集部注:会計上の営業キャッシュフローから運転資金増減を除いたもの)の3割程度を充当します。還元に関しては、利益をベースにする配当性向ではブレも生じるので、キャッシュ・アロケーションを基に還元策を講じていきます。
ROE以外ではキャッシュフローの最大化を重視しています。我々が意識しているのは基礎的営業CFです。これをいかに大きくしていくかが肝心です。
保有資産のポートフォリオを入れ替え、新たな成長投資や株主還元をコントロールしていきます。新規投資にはキャッシュフローと利益の双方を意識し、外部から大規模な資金調達をする考えはありません。ネットDEレシオ(負債資本倍率)は徐々に下がるでしょう。
――中計2026では、3年間で6000億円の投資計画を盛り込んでいます。進捗は?
次ページでは、渋谷氏が2030年に純利益を2倍にする計画の実現可能性について解説する。現状の利益水準を基に、具体的に積み上げる利益額などの数字も示しながら、必達目標だと強調する。一方で、株価が思うように上昇していない現状に関して、投資の神様、ウォーレン・バフェット氏の発言を引き合いに自らの見解を明らかにする。