熱狂的な応援を繰り広げる
観客の同調圧力が影響を与える

〈観客を満足させる利益が大きくなると、審判はそれに応じて贔屓の程度を変えることを示す〉
〈審判によるえこひいきは、シーズンの最初よりも終盤でより顕著になることが分かった。シーズンの最初から終わりにかけて、審判のバイアスは40%近く増加する〉
〈(テレビ中継などで)何百万人もの人が試合結果を気にするかもしれないが、(審判に)影響力を持つのは(スタジアムにいる)観衆である〉
〈身近な環境が審判の行動に影響を与えることを示す強力な証拠が見つかった〉

 簡単に言えば、詰めかけて熱狂的な応援を繰り広げる観客の同調圧力に審判が流されてしまうことがある、ということだ。人は社会的な圧力に弱く、その場の空気に流されやすいことはあらゆる研究が指し示す性質だ。

 人は常に「仲間外れになりたくない」「嫌われたくない」と感じている。グループで一緒に何かをする場合、一人だけ違う行動を取るのはとても難しい。みんなが同じように行動していると、「自分も同じようにしなければ」と無意識に感じてしまうのだ。

 自分の意見や信念をしっかり持ちたいものだが、それは大変に難しい。それがプロの審判にも影響を与えることがあるようだ。

巨人ファンがXで
問いかけたもの

 ちょっと話がわきにそれるが、日本のプロ野球オールスター戦で、伝統的に、セ・リーグの巨人以外の球団の応援団は、なぜかオールスターでは味方であるはずの巨人の選手は応援せず、罵倒を浴びせるということがあった。私もかつて罵声を浴びせていたものだ。

 今年になって、巨人ファンがXで、なんでそんなことをするんだと声を上げ、話題になった。最近ではまったく起きなくなったように思うが、際どいプレーで巨人に有利な判定が続くと、「審判が巨人をひいきしているのでは?」と感じることがあった。

 当時は、巨人が圧倒的に強く、ファンの数も全国にいて格段に多かったことを背景に、球場においてもそんな同調圧力に審判が流されてしまった可能性はある。今では相対的に巨人が強くなくなり、ファンの数も相対的に他球団で増えてきたように感じる。

 私のような「アンチ巨人」で生きてきた人間も、先ほどの巨人ファンの「なぜ味方の巨人をたたくのだ」と問われても、その理由を見いだしにくくなっていることに気づく。もはや大金を払うのはメジャーリーグであり、巨人にそんな面影は薄い。

公平な判定をするための
対策とは?

 さて、そんなわけで、圧倒的なファンの応援に、審判が流されてしまうということは、日本でもあった可能性がある。こうした、審判が無意識のうちにえこひいきをしてしまうという事象について、対策はいくつかあろう。

 審判の目的は観客を満足させるものではないということをもう一度、審判たちに教育し、注意を喚起し、認識させること。加えて、より正確なビデオ判定やAI判定など、えこひいきの起きないようなシステムの積極的な導入が肝要となりそうだ。

 ただ、観客たる私たちにできることといえば、自分の応援する選手やチームの試合に、テレビ観戦することなく、出かけていき、積極的な応援で、審判を同調圧力に巻き込むということもありそうだ。スタジアムへ行く理由が一つ増えて、私は少しうれしい。