前野学部長が提唱する、「幸せの4つの因子」とは?

 前野学部長が提唱する「幸せの4つの因子」とは、どのようなものか?

前野 第一に「やってみよう!」因子です。夢や目標を見つけ、それに向かって努力したり、成長を実感したりできると幸福度が増します。逆に、人からやらされていると感じたり、さまざまなしがらみから行動していると幸福度が低くなりがちです。

 第二に「ありがとう!」因子です。周囲にいる人とのつながりを大切にして感謝の気持ちを忘れない、日頃から他者には親切にする、そういったマインドを持つことで幸せを感じやすくなります。孤独感や孤立感は幸福度を下げます。

 第三に「なんとかなる!」因子です。物事を楽観的に捉え、チャレンジする姿勢そのものが幸福感をもたらします。何事にも悲観的な人は幸せを感じにくいといえます。

 第四に「ありのままに!」因子です。他人と比較することなく、「自分は自分だ」と考えることができれば幸福度が上がります。一方、他人と比べて、「自分なんてだめだ」「自分は損している」などと思うほど、幸福度は下がる傾向があります。

 この4つの因子がバランスよく満たされている人は幸福度が高いといえます。

 ウェルビーイングと幸福の関係で忘れてならないのが社会的な視点だろう。ウェルビーイングは、単に個人的な幸福を追求するだけでなく、社会全体で生み出し、支えていくべきものだ。

前野  ウェルビーイングは一般的には「身体的・精神的・社会的に良好な状態」とされます。これは、1946年に世界保健機関(WHO)が設立された際の「健康」についての定義(*1)を引き継いだものです。

 一般に、「健康」は個人に関わる問題ではありますが、一人で達成できるものでもありません。個人の健康は、社会全体として、安全や衛生、経済などにおいて一定の水準が確保されていることが大前提です。この考え方を拡張すると、ウェルビーイングの対象領域は平和や地球環境にまで広がります。

 さらにいえば、私が初代学部長として今春からウェルビーイング学部をスタートさせた武蔵野大学の礎となっている仏教の教え、すなわち、生きとし生けるものすべて、人間も動物も植物もみな幸せであれと願うことにも通じます。

*1  “Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”