無理して通ってもキャリアにつながらないことに
親が「気付いてしまった」

 親にしてみれば、御三家に入ったからといって有名大学に入学するための「ポイント」が貯まるわけではない。ましてや変化の激しい時代を生き抜くためのキャリアにつながる切符が手に入るわけでもない。となると、「子どもと校風が合わないのに開成や麻布に通う必要があるのか?」と親が「気づいて」しまった……。

 渋幕・渋渋、そして、豊島岡女子、聖光学院などの新しい進学校群が浮上してくるなかで、御三家は初めて、「選ばれる立場」に立たされることになったのです。

 就職活動における人気企業に例えるなら、渋幕・渋渋は外資系企業、御三家は官僚、聖光学院や豊島岡女子はユニコーンベンチャーのようなものです。就活人気が銀行や官僚から離れて、外資やベンチャーに移行しているため、銀行や省庁が相対的に人集めに苦労している図に似ています。

 官僚や銀行の仕事も意義のある仕事だけれど、他に就活生にとって魅力的な業種が出てきたことで相対的に人気が落ちたように、御三家以外の魅力的な学校が多数出てきたために、伝統を変えずにいる御三家が選択肢から外されてしまったということなのです。

 これまでは黙っていても優秀な生徒を集められていた御三家にとって、これはまさしくアイデンティティの危機です。

 同じことはすでに、巣鴨中学校・巣鴨高等学校、駒場東邦中学校・高等学校、桐蔭学園中等教育学校・高等学校といった学校が経験しています。20年前はこれらの学校から、東大に年間200人くらい合格していたのが、今は1、2人になっています。今後は、御三家であっても進学実績が落ちないという保証はありません。