岸田首相の地元に半導体補助金「大盤振る舞い」、マイクロンに2000億円規模助成の舞台裏先進7カ国首脳会議(広島サミット)に合わせ、米マイクロンが最大5000億円の投資を表明した広島工場 提供: Micron Technology, Inc.

台湾、韓国、米国の巨大半導体メーカーが岸田文雄首相に日本での投資拡大を表明し、政府は補助金で支援する調整に入った。米マイクロン・テクノロジーには2000億円規模を助成する見通しだ。大盤振る舞いの舞台裏に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

広島県に生産拠点を持つマイクロンが巨額投資を表明

 5月18日首相官邸で、岸田文雄首相との会談に集まったのはそうそうたる顔触れだった。米インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)、台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音(マーク・リュウ)董事長、韓国サムスン電子の慶桂顕CEO、米マイクロン・テクノロジーのサンジェイ・メロートラCEOのほか、米IBM、米半導体製造装置大手アプライドマテリアルズ、ベルギー半導体研究機関imecの幹部ら7人だ。

 これほどのビッグネームが集まる会合を膳立てたのは、経済安全保障を名目に半導体産業の復興をもくろむ経済産業省である。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催の前日のタイミングに「海外の巨大半導体メーカーが岸田首相に国内投資をコミットする」という“演出”で、政府が巨額の半導体支援を継続するメッセージを強烈に打ち出した。

 その最大の成果が、岸田首相の地元の広島県に生産拠点を持つマイクロンが巨額投資を表明したことだ。同社は官邸訪問に合わせ、「日本政府の支援を前提として」最先端DRAMの量産に最大5000億円を投資する計画を発表した。

 この投資の目玉は、日本国内に半導体工場で初めて「極端紫外線(EUV)露光装置」を導入することだ。これにより、処理速度や消費電力を高めた次世代品の「1γ(ガンマ)」を2025年以降に量産することを目指す。

 先端半導体の製造に欠かせないEUV露光装置は、最先端ロジック半導体の国産化を目指すラピダスも25年の試作ラインの設置に向けて導入を目指している。製造を独占するオランダのASMLは年間40台程度しか生産できないため、現時点では、TSMC、サムスン、韓国SKハイニックス、インテルらトップクラスの半導体メーカーのみが使う最新鋭の装置だ。これを日本国内の半導体工場に導入することは、先端半導体の囲い込みに大きな意味がある。

 経産省は、21年暮れに実を結んだTSMCの誘致交渉や、22年のラピダス発足の準備と並行して、EUV露光装置の国内導入をにらみ、マイクロンには水面下で広島工場への導入を度々要望してきた。