日本の自動車大手や電池メーカー、大手商社が政府と一体となってカナダに進出している。ところが、この官民戦略には、日本の自動車・電池産業の根幹を揺るがしかねない“重大な死角”がある。日本勢がカナダに「EV電池供給網」の新天地を見いだした理由を明らかにするとともに、そこに潜む“死角”の正体に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
カナダにEV電池のサプライチェーンを構築する
日本の官民戦略の投資が無駄になりかねない理由
今年9月、西村康稔経済産業相がカナダを訪問した。カナダ政府との蓄電池サプライチェーンおよび量子・AI(人工知能)等の産業技術に関する協力覚書の締結が目的だ。このほか、カナダで西村大臣は、蓄電池サプライチェーンに関する官民ラウンドテーブルへ出席している。
このラウンドテーブルには、蓄電池産業の業界団体である電池サプライチェーン協議会の他、パナソニック エナジーや、トヨタ自動車とパナソニック ホールディングスが出資するプライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES)、大手商社など、蓄電池産業に携わる名だたる日系企業が出席している。日本の官民双方が、電気自動車(EV)の電池の供給網を構築する候補地として、カナダに大きな魅力を感じているのだ。
今回のラウンドテーブルは、「日本とカナダの各社がWIN-WINの関係を築けるとの認識が一致した」(経済産業省関係者)として、一定の手応えを得られたという。
ところが、日本勢の官民戦略には、日本の自動車・電池産業の根幹を揺るがしかねない“重大な死角”がある。
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