レン君ママは、早速、この「いじめの段取り」が記されたグループLINE内のスクリーンショットを証拠として学校側に提出、いじめ事件として取り扱い、調査してもらえるよう依頼した。

「でも学校側はなかなか動きませんでした。一週間、毎日学校側とコンタクトを取っても動きは鈍いまま。その間、息子はカバンをカッターナイフで刺される、腕時計を壊されるといった被害もあり、もう学校へ通わせられないというところまで追い詰められたのです」

いじめられている子が
「学校を休まない」と宣言

 ところがレン君は、これだけのいじめ被害に遭っても、「僕が学校を休む理由はない」と毅然とした態度を取る。これが結果的には良かった。

「いじめ加害のグループは、基本的には成績が奮わない子ばかりでした。私立なので、こうした問題が起きた際、成績が優秀かどうか。親兄弟、親類縁者がOBであるか否かといったことも、微妙に影響があるようにも思えます」

 最初学校側は、レン君ママに「いじめかどうかは、これから丁寧に加害者とされる側からも話を聞き、事実関係を精査する」という説明をしていた。しかし学校側が発行したいじめ問題へのマニュアルと、それに基づいた手紙、そして誰がどう見ても「いじめの証拠」とわかるスクリーンショットといった物証もあり、その説明は徐々にトーンダウンしていったという。こんな具合である。

「確かに保護者さんのお立場ではいじめと捉えがちだが違う。これは親しい生徒同士の喧嘩である。いじめはよくないが喧嘩は構わない。旧制中学、旧制高校の歴史を踏襲する本校では、喧嘩であれば問題はないのです」

 カッターナイフでカバンを傷つけられた、腕時計を壊されたという段階になり、明確にいじめを行っていたとわかる証拠となるスクリーンショットが出て、初めて学校はこう見解を変えた。

「喧嘩なら構わないが、モノを壊したり、隠して壊したりといった行為は、紳士として認められない。もっとも問題を起こす側も私たちの生徒である。彼らにも将来があり、教育的配慮が必要だ。その上でこれからの彼らの対応を決めたい」

 こうしてレン君がいじめに遭った日からおよそ1カ月後、ようやく学校側は、「いじめ」と認め、加害5生徒の聞き取り調査を実施した。