子どものためになるのは私立か、公立か
名門校に通う「ある親子」の葛藤
わが子の中学校進学――。私立の受験か。それとも公立でいいのか。いつの時代も子を持つ親世代にとって悩ましいこの問いについて、令和の時代における最新動向をお伝えしたい。
「何かあったときに、私立は公立と違ってどこにも言っていくところがないんです……」
こう語るのは、関西にある私立の名門男子校に通う中学2年生のレン君(14)のママ(44)だ。幼稚園、小学校と、物静かで大人しいタイプだったというレン君は中学受験後も変わらず。クラスでも、ひとり静かに本を読んだり宿題などの課題をこなしたりして過ごす。
それを苦に思うことなく、むしろひとりで放っておいて欲しいと思っている。その方が勉強も、将来、生計を立てたいと思っているバイオリンでも、むしろ調子がいいからだ。
スポーツもそこそこできて、勉強は特に時間を割かずとも、公立小学校時代は、テストをすれば常に1番か2番。私立中学に通う今でも、クラスで4番か5番をキープしているという。典型的な優等生である。
「共学化したとはいえ、うちの子が入学したときは、まだ男子校でした。だからクラスは男の子ばかり。そのせいなのかどうか、話を聞く限り、ちょっと度が過ぎることもしばしばあるようで……」
このレン君のママが言う「度が過ぎる」とは、男子生徒ばかりの遠慮のなさからくる「ふざけ」を指す。昨年度、レン君が中学1年次のときは、これがエスカレート。やがて「からかい」から「いじめ」へと発展した。
「うちの子は基本、周囲と群れないタイプです。ひとりでいることを好みます。これが、からかいのネタにされたようです」
レン君ママは、息子がいじめ被害に遭っていた当時を振り返りつつ語る。そして彼女が学生時代を過ごした昭和の時代とさほど変わることのないいじめの実態について、こう語った。
「腕力があって強面という感じではなく、皆、大人しくて物静か。SNSを駆使して、いじめっ子たちが、自分たちの仲間になれる子をオーガナイズしている……、そんな感じです」
このいじめっ子グループのリーダーが、ハラである。ハラは日夜LINE、中でも「グループLINE」を使ってみずからの取り巻きである4人の生徒たちとの結束を固めていた。