家族・主治医以外に相談したかったのは
「主治医以外の医師」という現実

 医療情報プラットフォームの「メディカルノート」が2020年11月に会員を対象に行った「がん治療に関するアンケート調査」によると、「家族・主治医以外にがんに関する相談をしたか」という質問に対し、「希望したが、できなかった」と回答した人は15%。さらに相談できなかった人が本来相談したかった相手として、最も多かったのが「主治医以外の医師」だった。

 また「セカンドオピニオンを受診したか」という質問に対し「受けた」人は全体の21%、「受けていない」は79%。セカンドオピニオンを利用しなかった理由としては、「すでに検討している病院・医師を信頼していたから」が多数を占めていたが、一方で、「知らなかった」「病院を変えられると思っていなかった」「受診の仕方が分からなかった」など、情報が足りなかったことを挙げる層も一定数いた。

あのときセカンドオピニオンを受けていたら……
生かせなかった「2回のチャンス」

 1回目のチャンスは大腸がんステージ4の診断後、術前にあった。当時の主治医は消化器外科の教授で、メディアでは「大腸がんの名医」と紹介されることもある医師だった。温厚かつ熱意ある語り口に安心したタカトシさんは「すぐ手術して、大腸のがんを取りましょう。私がやりますよ」との提案に感謝し、開腹手術を受けた。

 だが、いざ腹を開いてみると、腹膜播種が発覚。「病巣が大きすぎるので、切除するとお腹の中が空っぽになってしまい、術後のダメージが大きい。一刻も早く抗がん剤治療を開始したほうがいいので、何もせずにお腹を閉じました」と説明してくれたのは、当日、助手についていた消化器外科の最年少の医師だった。「余命半年」を告げられたのもこのときだ。有名教授はいなくなっており、以降、遺体となって退院するまで、一度も顔を見せなかった。

 タカトシさんは意味のない、身体を痛めつけるだけの手術を受けてしまったことになる。「いやいや、腹膜播種があるなんて、開けてみて初めてわかったんだから仕方ない」と、一般読者は思うかもしれない。