それよりも税金は払うと決めて、日本で事業をやったほうがいい。遊ぶのでもいいですけど、とにかく住み慣れた場所で暮らすほうが、よほど穏やかで幸せな人生が送れると思います。

 節税もそうですし、資産運用もそうですが、お金のことを気にしすぎると不幸になります。制約が増えることで、心の負担が重くなるからです。

 その点、欧州の富裕層は割り切っています。彼らの多くは先祖代々手がけてきたファミリービジネスを持っており、その本業に力を入れています。そして安定したキャッシュフローを生み出すことを重視しています。

 その分、無理な節税対策にはあまり関心がありません。働くときはバリバリ働き、払うべき税金は払うというスタンスです。もちろん、欧州の国の中には相続税がなかったり、資産の大部分を信託や財団に移しているということもあるでしょう。

 急に税法が変わるというようなことがない限りは、欧州の富裕層は基本的に自国の税金を受け入れています。欧州の富裕層を見ていて、そのほうが間違いなく幸せだと感じます。

篠田 丈(しのだ・たけし)
アリスタゴラ・アドバイザーズ会長
2011年3月から現職。1985年に慶応義塾大学を卒業後、日興証券ニューヨーク現地法人の財務担当役員、ドレスナークラインオート・ベンソン証券及びINGベアリング証券でエクイティ・ファイナンスの日本及びアジア・オセアニア地区最高責任者などを歴任。その後、BNPパリバ証券で株式・派生商品本部長として日本のエクイティ関連ビジネスの責任者を務めるなど、資本市場での経験は30年以上。現在、アリスタゴラ・グループCEOとして、日本、シンガポール、イスラエルの拠点から、伝統的プライベートバンクと共に富裕層向け運用サービスを展開、また様々なファンドを設定・運用、さらにコーポレートファイナンス業務等を展開している。