一度に株式やETFに投じるのではなく
銘柄もタイミングも分散してバランスよく

 7月半ば以降、割高感などから日米の株を売る機関投資家は増えた。米国の景気先行きに対する不安が上昇し、米国の国債流通利回りは低下している。リスク回避的な動きは増えた。日米の金利差縮小により、外国為替市場ではドル安・円高が進んだ。こうして8月5日、日経平均株価は1970年以降で最大の下落を記録した。

 あまり予想しなかった相場の調整に、慌てて株を売ったのが個人投資家だ。株価が乱高下する値動きから、投資家の動揺が読み取れる。「上げ100日、下げ3日」といわれる、相場の下落スピードの速さを体現したといえるだろう。

 株価下落に直面し、「株価はどこまで下がるんだ」と思う人もいるだろう。「売るから下がる、下がるから売る」という弱気も連鎖しやすい。8月5日の国内の投資信託の取引は、ネットベースで1600億円もの売却になった。一転して翌6日、株価は反発した。世界的な金融市場の変動に驚き、証券会社のコールセンターに電話を掛けた個人投資家も多かったそうだ。

 この夏の教訓は重要だ。資金の運用にはそれなりの経験則が生きる。一般的に、投資の対象を分散する人は多い。株式なら複数の銘柄に投資する。株式と国債などを組み合わせたバランス型の運用を心がけるのもいいだろう。

 それに加えて、手元の余裕資金を一度に株式やETFに投じるのではなく、タイミングも分散するといい。将来がどうなるか予測できないのであれば、「毎月▲日に○万円買う」とか、「相場が〇%下落した時に株式に投資する」など、マイルールを決めておこう。そうすれば、「株価が上昇している間に投資しなくちゃ」といった焦りは抑えられるだろう。

 自分なりの投資のルールがないと、周囲の大勢の行動に同調してしまいがちだ。短期間で資産の価格が急速に上昇すると、富への欲求が過度に高まり、買い急いでしまうこともあるかもしれない。大切なお金を運用することは、時として強欲になる自分の心との闘いといってよい。