資金の運用に“気を休める”ことは大切
今後は景気減速リスクが高まる可能性

 金融機関に勤めるプロのファンドマネジャーは、基本的には四半期ごとに運用の結果が、TOPIXなどのインデックスを上回ったか否かで評価される。しかし、個人投資家は、単月だったり四半期ごとだったりの期間損益を気にする必要はない。

 ファンドマネジャーは詳細なリサーチを重ねる。調べれば調べるほど、自分は成功すると思いたくなる。実際に株や債券に投資し、予想外の損失に直面すると「こんなはずはない」と自分の見方にこだわることもある。その結果、挽回を目指して価格が下落する資産に追加の資金を投じるなど、時として合理的ではない選択を取ってしまうことが増えるだろう。

 一方、個人投資家は、四半期ごとの運用結果にこだわらなくてよい。気持ちを安定させ、資金をゆっくり自分のペースで運用すればよい。ゆとりのある範囲で、無理なく、自分のやり方で長期の資産形成を目指そう。想定外の相場下落などに対するストレス(認知的不協和)を緩和することにつなげよう。

 その上で、時期をとらえて投資することを心がけたい。価格が大きく下げた局面で資金を投じることができれば、中長期的な損失のリスクは抑えることができるだろう。

 いつ、リスクをとるか。これは個人の意思決定だ。リスクテイクの量(投資の金額)とタイミングは自分で決めることができる。一方、いつ、どの程度の収益が発生するかは分からない。自己責任の範囲内で長期の資金を運用するため、経済環境の変化などで資産の価格が下落した場面をとらえ、種々の資産に資金を振り向けよう。うまく資産を購入できたなら、後は忘れるくらいの気持ちでもいいかもしれない。

 今後、米国の労働市場は軟化し、景気が減速する懸念は高まるだろう。世界的に株式、国債の価格変動性が高まるリスクもある。周囲に振り回されず、自分自身の行動を確認し、自らに適した投資のルールを決めよう。さもないと、投資が人生を豊かにする一助になるどころか、個人を苦しめることになってしまうはずだ。