スマホを持つ群衆写真はイメージです Photo:PIXTA

かつて、NTTドコモ(当時)は、世界で初めて携帯電話によるインターネット接続を可能にする「iモード」を発表。iモード対応1号機として投入されたのが、富士通の「ムーバ F501i」だった。そうして富士通の携帯電話事業本部を母体に発足したのが、FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)だ。同社の「らくらくスマートフォン」はシニアに支持されたヒット商品だ。しかし5月末、FCNTは民事再生法を申請した。背景には何があったのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

旧富士通の携帯電話事業が破綻

 5月30日、「らくらくスマートフォン」などを手掛けるFCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理された。同日、親会社のREINOWAホールディングス、その子会社であるジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)も民事再生手続き開始の申し立てを行った。わが国のスマホメーカーの凋落ぶりは鮮明だ。

 今回の破綻要因は、FCNTが世界経済の速い変化に対応ができなかったことだろう。国内の人口減少などによる収益悪化や世界的な競争激化、さらに物価上昇や円安によりコスト負担が増すなどし、資金繰りが悪化していた。

 FCNT以外にも、そうした変化に対応できず破綻する企業が目立つようになってきた。1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている。