親として気がかりな
我が子の「収入」

 収入について、長野の実家の両親から長い間心配され続けた。父はガチガチの公務員なので、ライターだとか映画製作だとか、最初はまるで理解ができなかった。お盆や正月の夜、風呂上がりの父が爪を切りながら、ほんのちょっとした瞬間、不意打ちのようによく聞いてきた。

「家賃は払えてるのか」

「タカオ君(夫)は、毎月金を入れてくれるのか」

 母はもっと容赦がなく、帰省のたびにさり気なく、「一枝はどのくらい出版社からいただいているの」と確認してくる。それが見事としか言いようのない探りの入れ方で、「あのタレントさんのインタビューの記事良かったね」という、全く無防備なところからボールを投げてきて、こちらがいい気分になり「マネージャーさんにも原稿、褒められたんだよ」とうっかり応えると、すかさず「あれくらい書いて、おいくらもらえるの」。

 今、演劇をやっている娘に私が全く同じ質問をしつこくして、「ママにはもう答えない!」と突っぱねられている。両親も、こんなふうに心配でしょうがなかったのだなあと、今ごろ気づく。