COTYを受賞したのに…
人気車になり切れなかったトヨタ「iQ」

 2008年11月に発売された、トヨタのマイクロコンパクトカー「iQ」。このモデルはドイツの自動車メーカー・スマートが手掛ける各種小型車をはじめ、同じくドイツのフォルクスワーゲン「UP!」、イタリアのフィアット「500」などの欧州Aセグメントを意識して開発されました。

元日産エンジニアが忖度なしで選ぶ「期待外れのクルマ」、“セダン復権”目指すも夢破れた高級車とは?全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmというコンパクトボディのトヨタiQ。世界初のリヤウインドウカーテンシールドエアバッグを含む9個のエアバッグやS-VSCを全車標準装備していた
画像出典情報出典:トヨタ自動車)

 iQはこれらのライバルたちよりもさらに全長が短く、全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmというコンパクトボディに大人4人を座らせるという、なかなか見られないパッケージングでした。

 一般的に、ホイールベースの短い小型車は小回り性能はいいものの、高速走行時の安定感が不足しがちだと評価されます。ですが、iQは新開発した電動パワーステアリングやサスペンションなどによって安定感があり、走行性能も十分なレベルが与えられていました。

 さらに小型軽量ボディと1.0リッターエンジン+CVT(無段変速機)によって燃費性能にも優れ、計9個のSRSエアバッグをはじめとする高い安全性能も有していました。これらの点によって「革新的なFF車」として評価されたiQは、その年の日本カーオブザイヤー(COTY 2008-2009)を獲得。2位シトロエンC5(223点)に300点以上の大差をつけ、526点での圧勝でした。

 発売開始1ヵ月間は、月販目標2500台に対して8000台を受注するなど好調だったiQですが、その後は失速。この手の幅が広くて全長が短いクルマは、確かに欧州では人気があります。しかし、軽自動車という優秀なコンパクトカーがある日本では、荷物が載らない上に税金面でもメリットがないiQを選ぶ人は少なかったようです。販売面では振るいませんでしたが、記憶には残ったモデルでした。

 ほかにも、トヨタ ブレビスやホンダ エディックス、日産 ティーノなど、もっと売れると思ったのに売れなかったクルマは数多くあります。期待されながら日の目をみることができなかったクルマたちも、こうして振り返り、多くの人に思い出してもらうことができれば、少しは浮かばれるというもの。また機会があればご紹介したいと思います。