価格は他社と拮抗…
「新型iPhoneに買い換え」が得策になる

 そこで効いてくるのが価格戦略です。iPhone 16シリーズの価格は12万4800円から。ライバルのグーグルのGoogle Pixel 9は12万8900円からで、サムスンのGalaxy S24は12万4700円からなので価格はほぼ拮抗しています。

 だとしたら新しいAI機能を使いたいと思ったユーザーにとって、価格面で考えれば他機種に乗り換えるよりも、新しいiPhoneに買い替えたほうが得策です。

 なにしろいままで通りのユーザーインターフェースが維持できますし、翻訳などの新たなAI機能はいずれダウンロードできるようになるでしょう。性能面で進んでいるわけではありませんが、劣っているわけでもないのです。

 そして世界には4年以上買い替えていない買い替え適齢期のiPhoneが世界に4億台あると推測されています。この莫大な潜在需要を考えると、アップルの来年の販売台数は、劇的に増加するのではないかというのが、冒頭の予測です。

 繰り返しになりますが、AIを武器にすべき戦いにおいて今のところアップルは戦力が不十分な状況です。

 そこを逆手にとって、あえて古いiPhoneすべてにAI機能を公開することで、ユーザーに他社ではなく自社への買い替えを促す。

 その買い替え需要に集中したストーリーで一貫しているという点で、今回のアップルの発表は、競争戦略の専門家の視点ではなかなかの策士だったと言えるのではないでしょうか。