入社までの半年間で、企業はどうすればよいか

 日々の忙しさのなかでも、人事担当者が手間をかけて「内定者フォロー」を行うことが、内定者にとっても、企業にとっても大きな価値があることがわかった。もし、いま、御明さんが人事担当者だとしたら、内定式から入社式までの半年間に、学生に対して、どのような「内定者フォロー」を行うだろう。

御明 10月から4月までの約6ヵ月の間に、懇親会を2回ほど開催したいですね。もっとやってほしいという内定者もいるかもしれませんが、私は、基本的には、学生をかまいすぎないようにしたいです。なぜなら、残り少ない学生生活を悔いのないように過ごしてほしいから。そして、そうしたメッセージとともに、「悩みや不安があったら、いつでも何でも話してください」という態度をしっかり示していきます。また、懇親会のような多人数で会う場以外にも、必要に応じて、個別の面談を設けたり、先輩の若手社員を紹介したりするのもありだと思います。

 長年、さまざまな企業の人事部と接してきた御明さん――採用・教育担当者の苦労がわかるからこそ、効果的な「内定者フォロー」を行い、その企業ならではの人材育成をしてほしいという思いが、今回のセミナーとインタビューから強く伝わった。

御明 人事部の皆さんは、毎日お忙しいですが、「10年後・20年後に、その会社で活躍する人材を育てる」という強い思いで新入社員に接していただきたいです。その始まりが、「内定者フォロー」です。「内定者フォロー」はいろいろな方法があって正解はありませんが、まずは、“思いを持って”内定者に向き合うことが大切です。

 また、私は、内定辞退をした学生に対しても、企業からのエールがあるとよいと思っています。「内定辞退」でお互いの関係が終了するのではなく、「他の会社に行っても頑張ってください!」といったメッセージを明確に伝えるのもありではないか、と。内定を辞退した学生が、やがて、社会人として成長して、中途入社してくる可能性もありますから、内定という “縁”を、企業も学生も忘れずにいたいですね。