「あぶく銭」になりがちな相続財産
財産のストーリーが重石になる

 遺言者のAさんは「子どもたちに貯金を均等に遺したい」ということでしたので、「お子さんたちに何か伝えたいメッセージはありますか?」と尋ねたところ「子どもたちには直接言ったことはないんですが」と話してくれた内容が上記の付言です。

 この「財産のストーリー」を通して、子どもたちは相続する貯金が、実は母親が大変な思いをして貯めたお金だったことを知らされます。もし皆さんがお子さんの立場でしたら、このお金をムダ使いできますでしょうか?

 全部が全部そうだとは言いませんが相続財産は受け取る側からすれば、「棚からぼたもち」のいわば「あぶく銭」と言えるでしょう。人間一度でも、あぶく銭の味を知ってしまったら危険です。分不相応なお金を相続したせいで、まじめに働くのが馬鹿らしくなり会社を辞めて夜の街に入り浸るようになり、浪費・散財を繰り返し、果ては借金地獄で自己破産、そして一家離散……。実際そういう相続人を私は知っています。

「あぶく銭」とはよく言ったもので、自分が汗水たらして働いて得たお金ではないから軽いのです。あぶく銭はまるで羽が付いているかのようにフワフワとすぐ飛んでいってしまいます。

 飛ばないためには重石が必要です。それが財産のストーリーです。散財するのはその財産の重みを感じていないからです。相続を美味しいと思わせない。ぜひ心して相続するように付言で伝えてください。

図表:相続は想いを次世代につなげるもの本書より
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