公共交通機関が止まることが
高齢者の「外出率」低下に直結
路線バスの廃止・減便が社会に及ぼす影響というと「買い物難民」や「通院難民」に目が向きがちだが、そんな単純な話ではない。
住民に一番身近な路線バスというのは、人間にたとえるならば血液を隅々にまで行き渡らせる「毛細血管」だ。血が通わなくなれば壊死が始まる。
路線バスは鉄道や飛行機とも密接に結びつき一体的な交通網を築いているので、いずれ日本全体の動脈が壊れていくこととなる。ただでさえ人口が減少していくというのに、人々の動きが滞るようになれば日本経済にとって致命傷となりかねない。
例えば、鉄道だ。駅の利用者の多くは、路線バスに乗り継いで自宅などへ向かう。もしバスの便数が減ったり、廃止になったりすれば鉄道利用者まで減少する。公共交通機関が細ったエリアはやがて地価が下がり、宅地開発計画も見直しを迫られよう。鉄道の沿線価値も毀損することとなる。
東京都市圏交通計画協議会が、交通利便性が損なわれたならば人々が外出を控えるようになるとの分析結果を紹介している。とりわけ高齢者が影響を受けやすい。65歳以上の場合、公共交通が便利なところの外出率は67.1%だが、不便なところでは60.2%である。不便なところでマイカーなども使えないとなると39.6%にまで落ち込む。