本格レジャーユースについては“見切った”
パセンジャー重視の
快速クロスオーバーSUV

 まずは甘口レビューをお伝えしよう。ZR-Vの商品性を手短に表現すると、本格レジャーユースについてはある程度“見切った”、パセンジャー重視の快速クロスオーバーSUVである。

 室内は人間が乗る居住区重視。キャビンにスペースの多くを割り当て、4人乗車でも長距離ドライブがストレスにならないくらいゆったりと着座できる。そのぶん荷室容量は割を食い、容量は395リットルと小さい。大荷物を積んでのレジャーユース用というよりは人と手荷物を乗せての中長距離旅行用という印象だった。

 人主体の移動のツールとしては、ZR-Vはかなり優秀な部類に属していると感じられた。ルーフを低めたことによる低重心化は走行性能と快適性の両立にかなり効いており、路面のうねりが大きな高速道路の老朽化路線、カーブだらけの山岳路など、さまざまな局面でぐらつきの少ない、良好かつスッキリとした乗り心地が維持された。敏捷性もかなり高く、全高1550mmクラスの低車高型SUVに近いものがあった。

 ロードテスト車のハイブリッドe:HEVの場合、経済性、航続性能も優秀と言える水準だった。長距離移動時は新東名をフルに走った区間を除き常時20km/lラインを超え、全国主要都市の中で「渋滞発生率ワースト」である鹿児島エリアでも16km/l台後半。最長無給油区間は鹿児島から山陰回りで名古屋に達した1142km。このクラスのAWDとしてはかなり良い数値で、低い燃料コストで自在に駆け回れる感は十分だった。

 割を食っているのは荷室。395リットルという容量はCセグメントの低車高ハッチバックモデルと同水準にとどまる。シートアレンジも後席分割可倒以外に荷室を拡張する術は持たない。

ZR-Vは日本ではスペース重視の「CR-V」の代わりという位置づけだが、主たる開発目的はアメリカにおけるクロスオーバーSUVの入門モデル「HR-V」づくり。レジャー用品を大量に積んでバケーションの旅に出かけるというような使い方をされるクルマではないことから、そのへんの機能はバッサリ切り捨てられたのだろう。

 ヘビーなアウトドアユースには向かないが、オンロードにおける乗用主体で運用するのであれば、相当に質の良い移動が約束されるクロスオーバーSUV、というのが率直な感想である。

 そんなZR-Vのもうひとつの弱点は、ノンプレミアムCセグメントとしては価格が「かなりお高め」なこと。素晴らしい動的質感はノウハウだけで作り込んだのではなく、コストの高いハイスペックなプラットフォームを使って実現させたものだ。

 その価値を認め、それに余分にお金を払ってくれる顧客をどれだけ集められるか、ホンダの営業力も試されていると言える。記事の後編では要素別にさらに深堀りし、辛口レビューでまとめたい。

>>後編『ホンダZR-Vはお値段以上の価値アリ?競合トヨタRAV4との個性の違い』を読む