住宅ローン金利引き下げや現金給付まで!
国民の“機嫌取り”に追い込まれる中国政府

 これまでの中国の経済対策では、中央政府の財政赤字をGDPの3%に食い止めたいとの意図が透けて見えた。財政については、中央政府が支出拡大などの指示を出し、実際の資金調達は地方政府やその傘下にある地方融資平台が担ってきた。金融面では、国債流通利回り(金利)が急速に低下して銀行の利ザヤ低下を防ぐために、慎重に利下げなどを進める方針を取ってきた。

 しかし、8月の小売り、物価、新規の銀行融資、不動産販売や不動産投資、鉱工業生産、住宅価格などの各種データは軒並み、想定以上に悪化していた。そこで、政府はこれまでの政策をチューニングし、国債などの発行増加による財政支出の拡大と、金融緩和を進める方針を示さざるを得なくなった。それだけ、中国政府は追い込まれている。

 新パッケージの主な狙いは、個人消費を下支えし、デフレへの懸念を払拭することだ。9月24日、中国人民銀行は、銀行の預金準備率を0.5%引き下げるなどの金融緩和に加え、既存の住宅ローン金利も平均で0.5%引き下げた。「国家隊」と呼ばれる政府系ファンドによる本土株の購入(株価支援策)は、リスク資産の価格を下支えし資産効果を高める可能性を持つ。同日、人民銀行トップが臨時の記者会見を開き、今後も必要に応じて対策を実施する方針を示した。

 他にも、中国政府は10月1日の国慶節の祝日までに、極貧層や孤児などに生活補助として現金を給付することも公表した。支給金額や対象者など詳細は不明だが、中国民政省(わが国の総務省に相当)によると、6月時点で中国国内には474万人の極貧層がいるという。なお、かつて中国政府は貧困の基準を年間純収入2300元(約4万6000円、2010年基準)としていた。

 さらに、これまでは控えてきた国債発行増発による中央政府の財政支出拡大の方針も示している。通常、中国政府は4月、7月、12月に経済の現状を点検し、当面のマクロ経済運営の政策指針を定めてきた。なので、9月の会議で経済政策を議論することは異例である。裏を返せば、それだけ中国政府は経済の現状を厳しいと認識しているのだろう。