中国国民の消費者心理が過去最低に!
コロナで最悪…政策への信頼が戻るかは不透明

 新経済対策パッケージが出された背景には、中国国民の消費者心理が統計開始以来、過去最低の水準に落ち込んでいることがある。中国国家統計局は、1997年の水準を100として、月次で「消費者信頼感指数」を発表しているが、この8月は85.8と、91年以降で最低水準だった。

 従来は、中国政府が経済対策を実施すると、消費者心理は上向く傾向にあった。リーマンショック直後の08年11月、中国政府が4兆元(約57兆円)の経済対策を実施し、不動産投資の喚起策や自動車の購入支援策を実施すると、消費者信頼感は急上昇した。

 その後、17年秋の党大会を控えた時期、政府は公共事業を積み増した。これも、消費者信頼感を上向かせた。いずれのケースでも、中国の個人、企業、地方政府は、中央政府の経済政策に従えば所得は増加し、経済成長を実現できると考えてきたようだ。

 しかし、コロナ禍の発生と、20年8月以降の不動産バブル崩壊で、政策への信頼は低下しつつある。特に、22年3月、上海をロックダウンしたことによる消費者信頼感指数は、110ポイント台から80ポイント台半ばに急低下した。23年1月にゼロコロナ政策が終了すると消費者心理はリバウンドしたが、同年5月から現在まで80ポイント台半ばで停滞している。

 中国では、人々の政府の指示に対する心理が変化しているようだ。コロナ禍の中国では、一部の地域で住民がバリケードを組んで域外からの人の流入を阻止し、自らの安全を守ろうとした。それと同じように、政策を当てにするのではなく、自力で貯蓄に励み生活を守る切迫感を募らせる人が増えていると予想される。

 こうなると、経済全体で消費や投資は先細り、デフレ経済が深刻化する。デフレが長引けば、企業収益は停滞し、株価の下落リスクも高まる。地方政府の財政問題も深刻化して年金や医療への不安が高まり、社会が不安定化する要因となるだろう。