「彼らは火炎瓶を投げている」別の人物が同じ日にそう書いて、別の場所を知らせていた。

「こんな暮らし、したくない」とリナは携帯電話の画面を動かしながら言った。しかしこれが、壁のエルサレム側の生活なのだ。

手で食べる食事は楽しかったが
二度と行こうとはしなかった

 昼食のときにリナの父親が、かつて仕事関係者のパレスチナ人と食事をしたエピソードを話した。その人物がラマダンの最終日のイード(イスラム教の大祭)の晩餐に招待してくれたのだという。

 食事が出されると、だれもが食べ物の山に手を伸ばして直接手で食べた。本当に?手で?と彼は思った。食器はないのか?お皿も?しかし、美味しかったよ、と父親は言った。とても楽しい時間を過ごした。人生でそのような体験ができて嬉しかった。もっとも、二度と行こうとはしなかった。

 いいエピソードだった。話し方もうまく、だれもが、ブレントも、最後は笑った。ブレントがここにいたのはリナの弟と友だちになっていたからだ。その弟が食事に招待してくれた。

 昼食が終わり食器がかたづけられてからブレントはバルコニーに出た。そこはエルサレムが一望のもとに見渡せる11階だった。南東のほうを見やった。ベツレヘムのある方角だ。その向こう側にベイト・ザフールがあり、リナは子どものころにはよくそこへ行ったのよと言った。