環境・エネルギー政策は米大統領選挙で方向性が大きく分かれる重大な争点だ。バイデン政権の気候変動対策の目玉であるインフレ抑制法を継続し、再生エネルギーや電気自動車(EV)導入加速を掲げるハリス氏と、政策転換で化石燃料増産を目指すトランプ氏の主張は正反対だ。特集『「もしトラ」「もしハリ」損得勘定』(全11回)の#10では、米大統領選と脱炭素の行方を展望する。(IGPIグループ 共同経営者CLO 塩野 誠)
大統領選後の環境・エネルギー政策の焦点
バイデン政権の目玉「インフレ抑制法」はどうなるか
米大統領選挙は、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の間で、ウクライナ軍事支援や移民問題で論争が展開されているが、とりわけ環境・エネルギー政策は両氏の目指す方向が正反対で、大きな争点の一つだ。
ハリス氏は、気候変動対策のインフレ抑制法(IRA)の継続で再生可能エネルギーや電気自動車(EV)導入の加速を掲げる。それに対してトランプ氏は政策の大幅転換を主張、パリ条約の再離脱や環境規制の緩和による化石燃料増産を打ち出している。
今回の大統領選は環境・エネルギー政策の分岐点になり、とりわけバイデン政権の気候変動対策の大きな枠組みになっているIRAがどうなるかが焦点だ。トランプ政権誕生となれば、IRAの改正や政策の一部が撤廃される可能性があり、大きな振幅での波及が予想される。
脱炭素を進める再生可能エネルギー関連の産業や日本の自動車メーカーなどもEVの開発や生産戦略などで影響を受けそうだ。