米国の環境・エネルギー政策は、ハリス政権となれば気候変動対策が加速しクリーンエネルギーやEV導入が進むが、「トランプ再選」となればパリ協定再離脱やインフレ抑制法修正などで真逆の転換になる。化石燃料の増産は進むがガソリン車の需要増加などで原油価格はむしろ上昇する見通しだ。特集『「もしトラ」「もしハリ」損得勘定』(全11回)の#7では、米大統領選挙と環境・エネルギー政策の行方を検証する。(日本総合研究所調査部研究員 栂野裕貴)
気候変動対応で激しい党派対立
どちらが勝つかで大きく違う想定シナリオ
11月の米大統領選挙の結果は、その後の米国の政策動向を左右し世界経済にも大きな影響を及ぼすが、とりわけ、環境・エネルギー政策は党派対立が激しく、共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領のどちらが勝利するかによって想定すべきシナリオは大きく異なる。
ハリス政権となれば、米議会の勢力図がどうなるかにもよるが、気候変動対策が加速し、クリーンエネルギーや電気自動車(EV)導入が進むだろう。
一方でトランプ氏が再び大統領になるとなれば、環境・エネルギー政策は大幅に転換される。パリ協定再離脱などで、気候変動問題の国際連携から米国は離れ、国内ではEVへの支援縮小や化石燃料増産などにより、脱炭素の取り組みは逆戻りすることになりそうだ。
原油価格は、戦略備蓄用やガソリン車などの需要が高まるほか、米国の支持でイスラエルが周辺国への攻撃を拡大する可能性があり、中東からの安定供給への不安が強まりむしろ上昇する可能性がある。
ハリス政権とトランプ政権では、状況は大きく変わる見通しで、日本企業は米国の政策の動きへの機動的な対応が求められる。