米大統領選で経済・株・為替はこう動く! 「もしトラ」「もしハリ」損得勘定#5Photo:Scott Olson/gettyimages

米国の通商政策は、ハリス氏、トランプ氏のどちらが勝っても、対中国を中心に関税引き上げなどの保護主義が続く。トランプ政権による全ての国への「一律関税」が実施されれば、米国が最大の輸出先の日本は、自動車を中心に影響が大きい。自動車は中国製EVの規制問題などでも影響が懸念される。特集『「もしトラ」「もしハリ」損得勘定』(全11回)の#5では、トランプ氏、ハリス氏が勝利した際の通商政策への影響をそれぞれ検証する。(第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト 星野卓也)

対中国中心に関税引き上げ
トランプ政権なら「一律10%関税」

 米国の大統領選挙は、直近の世論調査ではハリス副大統領がやや優勢と伝えられているが、トランプ前大統領との支持率はわずかで、混戦模様のまま当日を迎えることになりそうだ。

 両者が掲げる政策は、外交や環境・エネルギーなど多くの点で大きく隔たっているが、通商に関しては、どちらが勝っても対中国強硬路線の下で保護主義的な政策が続く。

 両氏の通商政策を比較すると、ハリス氏が対中国を念頭に現状の関税政策を維持するのに対して、トランプ氏は関税政策の強化を明確に打ち出しているのが特徴だ。

 中国に対しては中国からの輸入品に60%のさらなる高関税をかけ、中国をWTO(世界貿易機関)の最恵国待遇から除外するとしている。

 ほかにも懸念されるのは、全ての国を対象に一律関税をかけることを打ち出していることだ。そうなれば日本も直接、影響を被ることになる。

 直近の2023年は、日本の輸出先は米国が中国を上回って最大の輸出国だ。中国製電気自動車(EV)の流入規制が強化される可能性もあり、自動車メーカーなどを中心に影響が懸念される。