ヨハネはなぜ女っぽく
描かれているのか
その証拠に、ミラノ時代のダ・ヴィンチの弟子であったジョヴァンニ・アントニオ・ボルトラッフィオ(1466/67-1516)がこの部分の模写を残しているのだが、そのデッサン(1-2、個人蔵)では、ヨハネはむしろはっきりと女性としてとらえられているのである(ただしマグダラのマリアが意図されているかどうかまではわからない)。
また同じくダ・ヴィンチに大きな影響を受けたミラノの画家アンブロージオ・デ・プレディス(1455頃-1508頃)は、フレスコ画のヨハネと同じ表情を、《合奏の天使》(1-3、1490年頃、ロンドン、ナショナル・ギャラリー)に与えている。同じ下絵を用いたのではないかと思われるほど、両者は顔の造作から髪型にわたるまで酷似している。ちなみに、天使は基本的に性を超えた存在である。
とはいえ、ここで確認しておかなければならないのは、ことヨハネのこうしたあいまいな描写に関するかぎり、ダ・ヴィンチのフレスコ画は必ずしも例外というわけではないという点である。