この石をつかえば、「川、とめられるんじゃね?」とおもった。すぐに犯行を開始した。日が沈むまで、ひとりで大量の石を移動させ、堤防が完成した。

図:P45同書より 拡大画像表示

「明日には川はとまり、犯罪者としてニュースになるだろう」と覚悟して、眠れない夜をすごした。

 翌日、川をみにいったところ、石の堤防はぶざまに決壊していた。川はギュルンギュルン流れている。「自然、やべぇ~」と思い知った経験だった。

 たぶん「自分」とはこの石の堤防みたいなものだ。変化する川を、とめようとすると、めっちゃ苦しい。

 すべてが変わっていくこの世界で、変わらない「自分」をつくろうとする。そんなことしたら、苦しいにきまってる。

すべての快楽を体験できたブッダが
一番きもちよかったこととは?

 具体的にかんがえてみる。

 私事ですが、30代になって、白髪がふえてきました。これまでめだつ白髪は、「オラァ」と引きちぎっていたのだが、最近引きちぎる回数がふえすぎて、いたくて涙がでてくる。苦しい。

 20代のまま、変化をとめて、「自分」を若いままにとどめようとする。川をとめようとするのと同じだ。めっちゃ苦しい。