私にはそうは思えません。たしかに、「自傷行為はある意味で快楽である」と言うことはできるかもしれません。しかし、それが自傷である以上、そこには必ず苦痛が発生しているはずです。
本来なら人間が避けるべきであるような苦痛を、なぜ、人が求めてしまうのか、そしてそれは正しいことなのかを、検討してみましょう(いやー、どんよりしそうですね。クッキーでも齧りながら読んでくださいね)。
私たちには、避けるべきものであるはずの苦痛を、自ら求めてしまうことがある――その一つの事例として、すぐに思いつくことができるのは、筋肉を増強するためのトレーニング、すなわち筋トレでしょう。
筋トレが自傷行為なわけないだろう、と思われたでしょうか。たしかに、一般的にはそうは考えられていません。
しかし筋トレは、一時的に筋肉に負荷を与え、意図的に筋断裂を起こさせる行為です。筋断裂は一般に筋肉痛と呼ばれる痛みを発生させます。その部位が再生し、超回復することで、以前よりも大きな筋肉へと成長します。このメカニズムを応用して、筋肉を肥大させる行為が、筋トレに他なりません。