両親との話はまったくの平行線
「お寺の奥さんには向かないぞ」

 しかし、目の前にいる両親との話はまったくの平行線。

「ああいうタイプはお寺の奥さんには向かないぞ」

「本人はやる気あるんだから信じてやればいいじゃん」

 そう反発しながら、両親の言うこともわからないではなかった。私が見てきた両親の生き様は、端的に言えば「滅私奉公」だった。自分たちの趣味でお寺を変えようとするなんてもってのほかで、お寺の伝統を尊重して自分を律していくことこそ正義だった。

 たとえば、お寺で購入する車は、日本車が原則。外車は奢侈なイメージを抱かせるからよくないらしい。父が乗っていた車種は、スカイライン、ブルーバードなど日産製のセダンと決まっていて、ボディのカラーも毎回ベージュ系の大人しいものだった。父に「今日新しい車が来るよ」と言われてワクワクして待っていても、届いてみると私と妹は「おんなじ車やん」とがっかりする始末。「友達のおうちの車、真っ赤でカッコよかったよ」と吹き込んでみても、「赤い車じゃお葬式いかれへんからな」とそっけない返答だった。